目次
0. はじめに
1. 会社が成立するまでの流れ
(1) 定款の作成・認証
(2) 出資の履行
(3) 設立の登記
2. どのようにして設立するか
(1) 専門家に依頼する
(2) インターネット上の会社設立サービスを活用する
0.はじめに
1.会社が成立するまでの流れ
会社を成立する際には一定の手続きを経ることが必要です。その手続きの大きな流れは、
▼ 流れ
(1)定款の作成・認証
定款とは、会社に関する基本的な決まりごとを定めたルールブックのことです。
株式会社を設立する場合、最初に作成する定款(原資定款)には、最低でも、①会社 の目的(どのような事業を行うのか)、②商号、③本店の所在地、④設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、⑤発起人の氏名、住所等を記載する必要があり、これらを記載しないと定款が無効とされてしまいます。
実際には、原資定款においてもより多くの事項を定めるのが一般的です。ただ、公証役場のホームページ(http://www.koshonin.gr.jp/format/)などに定款のひな型が用意されているので、それを用いて作成すれば問題ありません。
定款を設立時に作成して以降、会社の実態に応じて変更するという手続きを全く行わずに、会社設立時の定款がそのままという会社をよく見かけますが、定款は上記の通り会社のルールブックです。ですので、会社の運営実態はこのルールブックにあわせる必要があり、実態が定款と乖離してしまうようなら、定款変更という手続きを経る必要があります。例えば本店所在地を他の市区町村に移転する場合などには定款を変更しなければならず、そのためには、株式会社であれば、株主総会特別決議を経る必要があります。
作成した定款は、それが正式な手続きを経て作成されたことの公的な証明を受ける必要があります。すなわち、公証人の認証を受けなければ、定款の効力は認められません。
なお、定款を変更する際には公証人の認証を受ける必要はありません。
(2)出資の履行
定款の認証が終わったら、次は出資金を払い込むことになります。例えば、1人で株式会社を設立する場合において、発起人が100万円を出資して1000株を取得することとしたのであれば、この1000株を受ける対価として、100万円を払い込むことになります。
なお、設立時の発行可能株式数は、設立時発行株式数の10倍程度とするのが一般的なので(公開会社の場合は4倍まで)、上記の事例で想定される発行可能株式数は1万株程度ということになります。ただ、VC(ベンチャーキャピタル)などからの投資を受けてIPOすることを考えている場合、発行可能株式数(と設立時発行株式数)をより多くしておく方がよいでしょう。なぜなら、発行可能株式数が少ないと投資を受ける際に細かい出資比率の調整ができないので、投資を受ける段になって株式分割などの措置(株主総会又は取締役会決議+変更登記。定款変更が必要になることもあります。)を講じる必要が生じるからです。
このように、株式会社に関する文脈における出資(投資)とは、金銭等を払い込んでこれに相当する株式を取得し、株主となることを意味します(これに加え、出資あるいは投資という言葉に、新株予約権を割り当てることを含めることも多いです。)。株主すなわち株式会社の実質的所有者となる(あるいはその予約を受ける)という点や、一度出資した金銭等の返還を求めることは基本的にできないという点などにおいて、金銭の貸し借りとは大きく異なります。
株式会社を設立した後、エンジェル投資家やVCからの投資を受ける場合、株式あるいは新株予約権を発行することになります。すなわち、エンジェル投資家やVCからの投資は、上記の意味での出資を受けることを意味します。単にお金を借りることとの違いは意識しておきましょう。
(3)設立の登記
定款が認証され、出資も履行されたら、いよいよ会社を成立させることになります。会社の設立はここまで見たような一連の手続きによって行われるのですが、会社が法的に成立するのは、設立の登記がされた時です。会社の設立という行為の締めくくりが登記であると考えておけばよいでしょう。
株式会社の場合、「株式会社設立登記申請書」と題する書面に、⑴の定款や⑵の払込があったことを証する書面等を添付して提出し、法務局に株式会社の設立の登記の申請を行うことになります。なお、会社の成立日は設立登記がされた日ではなく、設立登記の申請日なので、特定の日付を会社設立日にしたい場合、その日に設立登記の申請を行うようにしましょう。
また、設立の登記の申請は、設立手続の調査終了日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に行う必要があります。「設立手続の調査終了日又は発起人が定めた日」といわれてもよく分からないという方は、出資を履行してから2週間以内に申請した方がよいと考えておきましょう。これより遅れても設立ができなくなるわけではありませんが、100万円以下の過料に処されるおそれがありますので、注意が必要です。
株式会社の法人登記においては、商号や本店(所在地)、目的(どのような事業を行うか)、発行可能株式総数、発行済株式の総数、資本金の額、役員の氏名等が記録・公示されることになります。
この登記事項に変更が生じた場合、例えば取締役が増えたときには変更の登記を行う必要がありますので、忘れないように注意しましょう。
2.どのようにして設立するか
これで、会社を設立する際にどのような手続きを経る必要があるのかは分かりました。しかし、定款を作成したり設立の登記をするにはある程度の法的知識が必要で、いきなり自力でやれと言われても困るのが現実です。
とはいえ、株式会社設立に要する労力を抑えるための手段は存在します。
(1)専門家に依頼する
まず、専門家に依頼することが考えられます。この場合でも最低限の書類は自分で揃える必要はありますが、自力ですべてを行うのと比較して大幅に楽になることは確かです。また、例えば「後で出資を受けることを想定しているのであれば、発行可能株式数はある程度多く取っておいた方がよい」(上述)といった、実務的なアドバイスを受けられる可能性があることも魅力といえます。
なお、ここでいう専門家としては司法書士が真っ先に挙げられますが、近時は税理士によるサポートも広まっているようです(ただし、税理士は登記の申請代理はできません。)。
(2)インターネット上の会社設立サービスを活用する
専門家に依頼することの欠点として、コストが挙げられます。司法書士に依頼した場合、司法書士費用として8万円前後かかるのが通常です。税理士のサポートの場合、税理士費用が無料という広告も見かけられますが、その場合、顧問契約の締結が求められるようです。
そうした負担を避けたい場合、「会社設立freee」(https://www.freee.co.jp/launch/)や「マネーフォワードクラウド会社設立」(https://biz.moneyforward.com/establish/)などのオンラインサービスを用いることが考えられます。これらは提供会社が用意するフローに従って情報入力や書類の準備をしていけば会社が設立できるというサービスで、会社設立に関する専門知識がなくても無理なく会社が設立できます。
■ コラム執筆者
弁護士 小堀 信賢
予備試験ルートで司法試験合格後、都内法律事務所で多様な事件処理に当たる。その後、都内で法律事務所を開設して経営者として法律事務所を運営しつつ、予備試験合格経験を活かし、大手資格予備校にて、予備試験対策の指導に携わる。
しばらくして、以前から強い興味を抱いていた企業法務をメインで取り扱うべく、ユニヴィス法律事務所に参画。現在では、契約書レビューや上場企業の株主総会対策、デュー・ディリジェンスや法人登記など、様々な企業法務に関与している。
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