【スタートアップ向け】社長1人法務期を乗り切る10の手引き その3:メンバーの参画~友達を取締役にしてもよいのか?~





目次

 0. はじめに
 1. 取締役を増やすためにはどうすればよいか
  (1) 株主総会決議
  (2) 役員変更の登記
 2. 安易に取締役を増やすことのリスク
  (1) 経営判断がストップしたり、情報流出のおそれがあります
  (2) 会社が責任を追及されるリスクが増加します
  (3) 解任するのに一苦労
  (4) まとめ


0.はじめに




1.取締役を増やすためにはどうすればよいか


そもそも、取締役を増やすためにはどうすればよいのでしょうか。代表取締役の一存で増やせるわけではなく、以下の手続きを経ることが必要です。



(1)株主総会決議


取締役などの役員の選任は、株主総会の決議により行う必要があります。ゆえに、取締役を増やしたい場合には、原則として株主総会を開催しなければなりません。決議は、普通決議(原則として議決権の過半数が出席、出席議決権数の過半数賛成)で足ります。


この役員の選任以外にも、代表取締役の一存では行うことができず、株主総会決議を要するとされる行為は少なくありません。例えば商号や本店所在地※、発行可能株式数の増加など、定款に記載された事項を変更(定款変更)する場合には株主総会特別決議(原則として議決権の過半数が出席、出席した議決権の2/3以上の賛成)が必要です。

※ ただし、本店所在地について、定款で、例えば「東京都渋谷区」とだけ定めている場合に渋谷区内で本店を移転することについては定款変更は不要であり、株主総会決議を得る必要もありません。

こうした行為を法定の手続きを経ずに行っていると、後々その効力を巡って争いが発生したり、あるいはIPO審査の際に問題視されたりすることがあるので、しっかりと会社法上要求される手続きを経るようにしましょう。



(2)役員変更の登記


株主総会決議(あるいはみなし株主総会決議)を経ており、また取締役候補者が取締役への就任を承諾したのであれば、その人は取締役になります。ただ、誰が会社の役員であるかは登記事項ですから、役員が増えた場合、変更の登記をする必要があります。具体的には、就任から2週間以内に役員就任の登記をしなければなりません。


注意点として、それまで役員であった人が任期を満了し、さらに継続して役員に就任する場合(重任)も重任の登記が必要となりますので、忘れずに登記するようにしましょう。


こうした登記を怠ると100万円以下の過料に処せられるおそれがあるほか、IPO審査において「コンプライアンスを軽視する、上場には相応しくない会社である。」と評価されるおそれも生じますので、注意が必要です。



2.安易に取締役を増やすことのリスク


取締役を増やす場合の手続きが分かったからといって、安易に取締役を増やすことはお勧めできません。ここでは、取締役を増やすことのリスクをご説明したいと思います。



(1)経営判断がストップしたり、情報流出のおそれがあります。


取締役会を設置している場合、重要な経営判断は取締役会で決定する必要がありますが、取締役会の決議をする場合、取締役の過半数が取締役会に出席している必要があります。また、取締役会を設置していない場合でも、取締役が2人以上いる場合、会社の業務決定は原則として取締役の過半数により行う必要があります。

よって、取締役にした人が集まりに顔を出さなくなってしまったりすると、その人数いかんによっては、会社の経営判断が行えない状況に陥ってしまうおそれが生じます。


また、取締役は、取締役会に出席することなどを通じて企業秘密について知ることができる立場にありますから、企業秘密をライバル企業に横流ししたり、あるいはSNSにアップするような人物が取締役に混ざっていると、致命的な事態に至る可能性もあります。



(2)会社が責任を追及されるリスクが増加します。

取締役会を設置していない会社の取締役は、原則として全員が会社を代表する権限を有しています。会社を代表する権限を有するというのは、会社名義で契約をすることができることなどを意味します。

一方、取締役会を設置している会社の場合、代表取締役以外の取締役は会社を代表する権限を有しません。しかし、会社がその取締役に「副社長」など会社を代表するかのような肩書を付したり、あるいはその取締役が勝手に「副社長」などの肩書を用いていることを黙認していた場合、その取締役が勝手に会社名義で結んだ契約について、会社が履行しなければならなくなる可能性があります。



(3)解任するのに一苦労


一度取締役にした人を解任する場合、株主総会決議(原則として普通決議で足ります)を行い、その後、解任の登記をする必要があり、手間がかかります。また、取締役会に欠席し続けているとか、企業秘密をSNSにアップしたといった明白な非違行為があればよいのですが、「何となく馬が合わない」「ビジョンを共有できる気がしない」といった相性的な理由で解任した場合、正当な理由なく解任したとして損害賠償の請求を受けるおそれもあります。



(4)まとめ


このように、適性を慎重に審査せずに取締役を増やすと、業務の停滞や企業秘密の漏出、第三者から会社への請求といった事態を招きかねません。また、いったん取締役にした人を解任するには手間がかかり、解任の理由によっては賠償請求をされる可能性もあります。よって、安易に取締役を増やすべきではありません。


取締役を増員する場合には、上述したようなリスク増加の可能性の高低(信頼できる人物かなど)と、その人物があなたの会社にどのようなプラスをもたらすのかをしっかりと天秤に掛けて検討するように心がけましょう。




■ コラム執筆者


弁護士 小堀 信賢
予備試験ルートで司法試験合格後、都内法律事務所で多様な事件処理に当たる。その後、都内で法律事務所を開設して経営者として法律事務所を運営しつつ、予備試験合格経験を活かし、大手資格予備校にて、予備試験対策の指導に携わる。
しばらくして、以前から強い興味を抱いていた企業法務をメインで取り扱うべく、ユニヴィス法律事務所に参画。現在では、契約書レビューや上場企業の株主総会対策、デュー・ディリジェンスや法人登記など、様々な企業法務に関与している。



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