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社長1人法務期を乗り切る10の手引き その4:取締役会と株主総会の運営はどのように行えばよいのか?【スタートアップ向け】

更新日:2022年3月19日





0.はじめに


1 取締役会の開催


(1)そもそも取締役会では何を行うのか

重要な経営判断を行うには取締役会の承認決議が必要です。具体的には、大きな設備投資をすることやそのために多額の融資を受けること、支店を開設したり支店長を配置するなどについて、取締役会設置会社では代表取締役の一存で決めることは認められておらず、取締役会の承認決議を得る必要があります。


(2)最低でも3か月に1回は開催する必要がある

会社法には「取締役会を年に○回開かなければならない」といった規定はありません。しかし、代表取締役などは、自己の業務執行の状況の報告、例えば「A社との業務委託契約締結に向けての協議は現在このような状況にある」といったことを、3か月に1回は取締役会に報告しなければなりません。

そのこととの関係で、結果的に、会社法上は3か月に1回の開催が必要となります。


(3)月1回以上は開催することが望ましい

ただ、真剣に株式会社を運営する場合、取締役会が3か月に1回しか開催されていないというのは、いかにも少なすぎます。例えば、「定例会」として、毎月第2金曜日に開催するなどして、月1回以上は開催する体制を整えるべきでしょう。


(4)取締役会開催の手順

取締役役会開催の原則的な流れは、①招集通知、②報告・審議・議決、③取締役会議事録の作成となります。ただし、取締役で話し合って設定した定例会のように、その開催について取締役全員(監査役設置会社においては監査役も)の同意があるといえる場合については、①招集通知は不要です。


(5)取締役会議事録の作成

取締役会を開催した場合、そこでどのような報告・審議・議決がされたのかをまとめた取締役会議事録を作成する必要があります。

取締役会議事録が存在しないと、例えば代表取締役の選任のように、原則として取締役会決議が必要である行為について、登記の必要書類が欠けた状態となるので、そのままでは登記することができません。また、取締役会議事録は、IPO審査との関係では、コーポレート・ガバナンスの構築・運営にしっかりと取り組んできたことの証拠のような役割も果たします。取締役会を開催したら、しっかりと議事録を作成するようにしましょう。


(6)取締役会の開催の省略

以上のように、例えば代表取締役から他の取締役に報告すべき事項がある場合や、代表取締役が、銀行からの多額の借入れ等、取締役会の決議を得るべき行為をしようと考えている場合、原則として取締役会を開催する必要があります。とはいえ、電子メールのやり取りで報告や同意の取り付けが可能であるにも関わらず、必ず取締役会を開催しなければならないというのでは不便です。

そこで会社法では、代表取締役等が取締役全員(監査役設置会社においては監査役も)に対して報告すべき事項を通知したり、代表取締役等が提案したビジネス上のアクション等について他の取締役全員が電子メール等で同意した場合には、取締役会の開催を省略できることとされています。ただし、この制度によって3か月に1回の取締役会の開催を省略することはできません。また、決議の省略については、定款にその旨を定めておく必要があります(報告の際の開催の省略については不要です。)。

  


2 株主総会の開催


(1)株主総会では何を行うのか

株主総会では、定款の変更や役員の選任・解任のような会社の重要事項や、発行可能株式数の増加のような株主の利益に重要な影響を及ぼす事項についての決議が行われます。また、事業の報告や決算の承認も行われます。


(2)定時株主総会と臨時株主総会


<定時株主総会>

決算(事業年度)の終了後、年に一度開催される(必要がある)株主総会のことを、定時株主総会といいます。この定時株主総会においては、事業報告及び決算の承認のほか、必要に応じて役員の選任などの決議が行われます。

すなわち、定時株主総会では、その事業年度において会社が行ってきた事業の結果を事業報告という文章の形で報告しつつ、数字で表された決算について、株主総会から承認を受けることになります。

また、役員の任期は、通常は就任から1年~10年(会社法や定款の定めによります)後の事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとなるので、この定時株主総会で、任期を迎えた役員に対応する再任や新任を行うことになります。


<臨時株主総会>

定時株主総会は1年(1事業年度)につき1回しか開かれないので、次の定時株主総会よりも早く株主総会決議を得る必要がある場合、例えば事業年度の途中で商号を変更しようとするときには、臨時に株主総会を開催し、決議を得る必要があります。このような場合に開催されるのが、臨時株主総会です。


(3)株主総会開催の手順

株主総会開催の原則的な流れは取締役会と同様、①招集通知、②報告・審議・議決、③株主総会議事録の作成となります。株主総会の場合も、株主全員の同意があれば①招集通知は原則として不要となります。


(4)株主総会議事録の作成

株主総会を開催した場合には、株主総会議事録を作成する必要があります。こちらも取締役会議事録同様、登記の際に必要になることがありますし、しっかり作成されていないとIPO審査においてマイナスの評価を招く恐れがありますので、ちゃんと作成するように心がけましょう。


(5)株主総会の開催の省略

株主総会についても取締役会同様、開催自体を省略できる場合があります。すなわち、代表取締役等が株主総会の議題・議案とすべき事項(例:取締役の選任)について提案をし、この提案について株主の全員が電子メール等により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます。

この制度は、株主の人数が少ない場合(株主全員からの同意を得るコストが、株主総会を開催して承認決議を得るコストを超えない場合)に使いやすいものといえます。ですので、ベンチャー企業であっても、ステージが進んで複数のエンジェル投資家やVCから投資を受け、株主がそれなりの数いるような場合は、この制度を利用するよりも株主総会を開催してしまった方がかえって簡便ということになるでしょう。


▼コラム ~取締役会のリモート開催について~




 

■ コラム執筆者


弁護士 小堀 信賢
予備試験ルートで司法試験合格後、都内法律事務所で多様な事件処理に当たる。その後、都内で法律事務所を開設して経営者として法律事務所を運営しつつ、予備試験合格経験を活かし、大手資格予備校にて、予備試験対策の指導に携わる。
しばらくして、以前から強い興味を抱いていた企業法務をメインで取り扱うべく、ユニヴィス法律事務所に参画。現在では、契約書レビューや上場企業の株主総会対策、デュー・ディリジェンスや法人登記など、様々な企業法務に関与している。




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